2025年6月30日、「死刑執行に抗議し、改めて死刑制度の廃止を求める声明」を発表しました。
死刑執行に抗議し、改めて死刑制度の廃止を求める声明
1 2025年6月27日、一人の確定死刑囚に対する死刑が執行された。石破政権において、2024年11月に就任した鈴木馨祐法務大臣の下で初めての執行であり、2022年7月26日以来の執行である。
同死刑囚は、神奈川県座間市で男女9人を殺害したなどとして、強盗強制性交殺人などの罪に問われ、2021年に死刑が確定している。同死刑囚については、公判段階において、殺害承諾の有無や責任能力の有無が争点となっており、弁護側は法定刑の軽い承諾殺人罪の適用を訴えていた事案である。
いうまでもなく、かかる重大な被害を発生させたことは社会的に許容されるものではない。
しかしながら、私たち自由法曹団は、死刑のない社会が実現されるべきであるという立場から、改めて死刑執行に抗議する。
2 死刑制度は、国家が人の生命を奪うものであり、人間の基盤にある生命そのものを全否定する非人道的な刑罰である。人は人として生まれながらにして尊重されるべきであり、対国家との関係において、人の生命は最大限保障されるべきある。人の生命を奪う死刑制度自体が、個人の尊厳を基本原理とする日本国憲法と相いれるものではない。
また、罪を犯した人の更生と社会復帰の可能性を完全に奪うこと、裁判は常に誤判・えん罪の危険性をはらんでおり、ひとたび誤った裁判に基づく執行が行われることになれば無実の者の生命が奪われるという取り返しのつかない人権侵害となるものであり、死刑には制度的な問題がある。
このことは、2024年11月に、構成メンバーに元警察庁長官や元検事総長が含まれる「日本の死刑制度について考える懇話会」が発出した報告書でも同様に指摘されているところであり、また、同年9月に確定死刑囚であった袴田巌さんに対して再審無罪判決が言い渡されたことからも明らかである。
さらに、日本政府に対しては、国連の自由権規約委員会・拷問禁止委員会による勧告のほか、人権理事会の普遍的定期的審査においても、死刑執行の停止、死刑制度廃止を前向きに検討するべきとの勧告が繰り返されており、死刑制度廃止に向けた国際的潮流を無視し続けるべきではない。
3 自由法曹団は、2021年10月23日に開催された創立100周年東京総会において、「我々が目指すあるべき社会とは、たとえ重大な罪を犯した人であっても更生の道を完全に閉ざすことなく、更生の可能性を信じ、すべての人が尊厳を持って共生できる社会である。」こと、そして、死刑制度が有する種々の問題点から死刑のない社会が実現されるべきとする立場から、死刑制度の廃止を求める決議を採択したところであり、今回の死刑執行に対しても強く抗議する。
そして、改めて死刑制度のない社会を実現するために、国会において速やかに死刑廃止に向けた立法措置を講じ、死刑制度が廃止されるまでの間、死刑の執行を停止するよう求める。
2025年6月30日