2025年11月28日、「 国(厚労省)のいのちのとりで裁判最高裁判決に対する対応策は裁判所の違憲立法審査権を踏みにじるものであり、撤回を求める」緊急声明を発表しました

カテゴリ:声明,貧困・社会保障

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【緊急声明】
国(厚労省)のいのちのとりで裁判最高裁判決に対する対応策は裁判所の違憲立法審査権を踏みにじるものであり、撤回を求める

 

 2025年6月27日、最高裁第三小法廷は、2013年から2015年にかけておこなわれた史上最大の生活扶助基準の引下げの当否が問われた全国訴訟において、引き下げの理由とされた「デフレ調整」について、専門的知見との整合性を欠くものであり、厚生労働大臣の判断の過程及び手続きに過誤、欠落があるとして、引下げが違法であると断じる画期的判断を下した。
 この判決に対し、国(厚労省)は、違法とされた減額分を受給対象者全員に追加給付するのではなく、2025年11月21日に、①最高裁判決で違法とされた「デフレ調整(-4.78%)」に代え、低所得者(下位10%)の消費実態との比較による新たな高さ(水準)調整を2013年当時に時を遡らせて「-2.49%」行い、②原告については「特別給付金」として①による減額分を追加給付するという等、対応策を公表した。
 しかしながら、不利益措置を遡及して適用することは、一般法理としての不遡及原則に反するものである。しかも、国(厚労省)が最高裁判所判決に従わないことは、裁判所の違憲立法審査権(憲法81条)と法治主義を否定するとともに、市民の裁判所を利用した権利運動と裁判運動を踏みにじるものである。
 また、公表された厚労省の対応策は、長年にわたり生活保護利用者の尊厳を踏みにじってきたことを省みず、ただただ支出を抑えようとして原告と原告以外の生活保護利用者との対応に格差を設けるものであり、これは法の下の平等(憲法14条)と無差別平等原則(生活保護法2条)に反するものである。
 自由法曹団は、当年10月20日開催の総会における決議に続き、違法を断罪した最高裁の判断を踏みにじる国(厚労省)の対応策に強く抗議するとともに、改めて、①国ないし厚生労働大臣からの心からの謝罪と、②差額分保護費の追支給など、被害の全面的な回復に向けた対策を直ちに講ずることを求める次第である。

 

2025年11月28日

自 由 法 曹 団
団 長 黒 岩 哲 彦

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