2026年1月13日、『トランプ政権のベネズエラに対する軍事攻撃を強く非難し、 日本政府が米国政府に対し国際法を遵守して「力による現状変更」をしないよう申入れることを求める声明』を発表しました
トランプ政権のベネズエラに対する軍事攻撃を強く非難し、日本政府が米国政府に対し国際法を遵守して
「力による現状変更」をしないよう申入れることを求める声明
2026年1月13日
自 由 法 曹 団
団長 黒 岩 哲 彦
1、米国のトランプ政権は、日本時間の2026年1月3日、ベネズエラに対し、予告なしの一方的な軍事攻撃をおこない、同国の大統領夫妻を拉致し、米国内に連行した。ベネズエラ政府の発表では、この攻撃で100人以上が死亡し、同数以上のけが人が出ている。
2、国連憲章2条4項は、各国に対し「国際関係において、武力による威嚇または武力の行使を、いかなる領土保全または政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しないその他いかなる方法によるものも慎まなければならない。」と定めている。今回のトランプ政権によるベネズエラに対する軍事攻撃は、同条項違反であり、国際法上、法的根拠は全くなく、武力行使の例外規定にも該当しない。報道によれば、トランプ大統領は、麻薬の密輸がアメリカへの攻撃であるなどと主張しているが、麻薬組織による密輸が国家による武力攻撃と同視できないことは論を待たない。
また、トランプ政権は民衆を攻撃したものではないとか、マドゥロ大統領が独裁をしていたなどとも主張するが、ベネズエラの民主主義は同国国民の手により達成されるべきものであり、他国が軍事力でもって押しつけるものではない。しかも、トランプ大統領は、ベネズエラ大統領の交代を要求し、今後は、「適切な政権移行」が実現するまでベネズエラを米国が運営すると発言しており、翌4日には、ベネズエラについて、石油のインフラに大規模な投資をしない限り国の再建はないと述べ、選挙を通じた民主化よりも優先する考えを示し、ベネズエラがアメリカに従わない場合、「2回目の攻撃をする」とまで述べてベネズエラの内政に直接干渉する姿勢を示した。
トランプ政権は、ベネズエラの民主化よりも、ベネズエラに埋蔵される石油資源を米国の支配下におくために予告なしにベネズエラ国内に侵入し、軍事行動で一国の政権を打倒し、大統領の交代等をさせており、今回の行動は、主権および自決権の侵害、内政不干渉の原則違反でもあり重大な国際法違反であることは明白である。
これらトランプ政権の行為は、いずれも国際法の基本原則を無視したものであり、大国の身勝手な要求にそって国際社会における法の支配を破壊するものである。
3、また、今回のトランプ政権によるベネズエラに対する軍事攻撃は、大国が、自身の気に入らない他国の政権を直接打倒し、その国を支配下におこうとする「力による現状変更」にほかならない。米国は、ロシアによるウクライナ侵攻を非難し、さらには中国による台湾や周辺諸国に対する軍事的威嚇に対して「力による現状の変更」に反対するとしてきたが、自らそれをやってのけたことは厳しく非難されるべきである。
4、こうしたトランプ政権による国際法無視の軍事行動は国際社会から強く批判されて当然であり、NATO加盟国の中でさえも当初、スペインを筆頭に、フランスやデンマークからはこの軍事行動を批判するコメントが出された。1月5日に開催された国連安保理の緊急会合でも、ロシアや中国のほか、コロンビア、デンマーク、イランが米国を名指しで批判し、フランスも軍事作戦は紛争の平和的解決や武力行使の禁止の原則に反するものだと指摘している。その他の国も名指しの批判こそ避けたものの国連憲章の遵守の重要性を指摘している。
5、ところが高市政権は、このようなトランプ政権による軍事行動等の暴挙に対し、賛意こそ表明していないものの、邦人保護とベネズエラにおける民主主義の回復を言うのみで、自ら米国と確認してきた「力による現状変更への反対」を言わず、国際法違反、主権侵害を指摘することもしていない。また、木原官房長官はメディアからの質問に対し、「直接の当事者ではない」からとして国際法違反にあたるかどうかのコメントを避けたが、直接の当事者でなければ評価をしないというのであれば国際法は意味をなさなくなってしまいかねない。
この高市政権の態度は、トランプ政権に追随し、国際法を尊重せず、自ら主張してきたことも言わない卑屈なものと言わざるを得ない。また、「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」という日本国憲法前文の趣旨に反し、トランプ政権の暴挙に加担することにつながるものであって、同政権と並んで強い批判を免れないものである。
6、自由法曹団は、1921年の創立以来、基本的人権をまもり民主主義をつよめ、平和で独立した民主日本の実現に寄与することを目指し活動してきた法律家団体として、米国に対し、今回の軍事攻撃を断固非難するとともに、国際法を遵守して、武力攻撃を無条件に停止し、将来にわたる軍事的介入をやめること、マドゥロ大統領夫妻の安全な帰還を保障すること、ベネズエラの主権を尊重し、内政干渉をやめるべきことを強く求めるものである。
また、日本政府に対しては、米国による国際法違反と「力による現状の変更」を批判し、国際法の遵守とベネズエラへの内政干渉をやめるよう要請することを求める。
以上
