2026年1月17日常任幹事会において、「クルド民族に対する差別・迫害に反対し、諸国の人が平和的に生存する権利が保障されるよう不断の努力をすることを宣言する常任幹事会決議」を採択しました
クルド民族に対する差別・迫害に反対し、諸国の人が平和的に生存する権利が保障されるよう
不断の努力をすることを宣言する常任幹事会決議
2026年1月17日
自由法曹団常任幹事会
「国を持たない最大の民族」と呼ばれるクルド人が、埼玉県川口市に最初にやってきたのは1990年代前半であるとされるが、現在川口市周辺には2000から3000人のクルド人が居住しているといわれている。
本日、我々は、クルド人差別の実情を知ろうと現地視察をおこない、川口市周辺で暮らすクルド人の多くが、解体業や飲食業などに従事し、その子どもらは他の地域における外国人の子と同様に学校に通い、日本社会に溶け込み、その一員として生活をしていること、川口市が繰り返し、難民申請が認められないもとで就労許可の出ない仮放免の者も生活手段を得るための就労を可能とするよう制度の改善を求めてきていることなどを学んだ。
クルド人はトルコ、シリア、イラン、イラクにまたがる、クルディスタンと呼ばれる山岳地帯に居住する民族である。トルコ政府は、同化政策の下でクルド人の存在そのものを否定し、長年クルド語を禁止してきた。そして、1980年代から90年代にかけて、クルド人の政治的権利などを求めるクルディスタン労働者党(PKK)を軍事弾圧し、300をこえる村を破壊した。これにより、村人達は漂流を余儀なくされ、一部は世界各地に生活の場を求めた。クルド人が埼玉県南部の川口市や蕨市で暮らすようになったのは、そのような背景がある。
日本社会に定着して暮らす在日クルドの人々に対して、2023年春頃より、インターネット・SNSで連日、「クルド人のせいで川口の治安が悪くなった」「クルド人は日本から出ていけ」といったヘイトスピーチを伴う投稿がなされるようになった。こうしたネット上のヘイトスピーチの波に乗って、他県から川口市に来てクルド人排斥デモ・ヘイトスピーチを行う者も現れた。クルドの子どもたちをネットに晒す行為も行われ、中には、「クルド人を見かけたらリンチするか殺せば良いんですよ」「クルド人に死を」といった暴力的言動も見られた。これら人権侵害の攻撃により差別や暴力を恐れて学校に行けなくなった子どももいる。
2025年5月には法務省が「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」を打ち出した。これは、滞在資格のない外国籍市民が国民の「安全・安心」を脅かしていると一律に犯罪者扱いすると言えるものであった。この結果、母親や子どもに滞在資格がある場合でも父親だけ突如強制退去させられる、子どもが公園から突如入管に連行されるといった、非人道的な外国人排斥政策がおこなわれた。日本社会にはいま、排外主義と外国人排斥の風潮が深刻なまでに広がっている。
しかし、ヘイトスピーチは、日本が加盟する人種差別撤廃条約や2016年に成立した「不当な差別的言動解消法」の趣旨に反しており、許されるものではない。また、日本国憲法は国際協調主義(98条2項)を採用するとともに、その前文で「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と定めており、差別や迫害を逃れて日本で平穏に居住を始めた在日クルド人にも、「恐怖と欠乏から逃れ、平和のうちに生存する権利」が保障されなければならない。
我々自由法曹団は、クルド民族に対するヘイトスピーチを含む差別・迫害的言動、社会を不安に陥れる言動に反対するとともに、排外主義を克服して、諸国の人が平和的に生存する権利が保障されるよう不断の努力をしていくことをここに宣言する。
