2026年5月25日、「辺野古沖における事故の被害者に哀悼の意を表明するとともに、 文部科学省による平和教育への不当な介入に抗議する緊急決議」

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辺野古沖における事故の被害者に哀悼の意を表明するとともに、
文部科学省による平和教育への不当な介入に抗議する緊急決議

 

2026年5月25日
自  由  法  曹  団
2026年滋賀びわこ・5月研究討論集会

 

1、2026年3月16日、沖縄県名護市・辺野古における同志社国際高校の平和教育実施中の転覆事故で生徒を含む2名の尊い命が失われるという痛ましい事故が発生した。
 自由法曹団はまずもって事故でお亡くなりになられた方々に衷心より哀悼の意を表する。学校教育課程における生徒の死亡事故は学校および事業者のそれぞれに安全管理に問題がなかったかしっかりと解明して再発防止策がとられるべきであり、本件もまずもって真相究明が徹底的に図られるべきである。

2、上記事故に関し、文部科学省は、2026年5月22日、同校の安全管理が不十分であり、また、同校において実施していた平和体験教育が教育基本法第14条2項違反にあたるとして指導をおこなったと発表した。1947年の教育基本法の施行以来、同条項違反が認定されるのは(改正前の旧8条2項も含め)初めてのことである。
 しかし、安全管理面での指導と、教育基本法違反との指導とは別の問題であり、以下述べるように、教育基本法第14条2項違反とした指導は教育基本法の誤った運用による不当な教育への介入である。

(1)教育基本法第16条1項は、「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下に、公正かつ適正に行われなければならない。」としている。これは教育勅語により戦争教育をおこなった反省から、行政や政治権力が自らのイデオロギーを押しつけることを防ごうとしたものである。
 そして、1976年の旭川学力テスト事件最高裁判決は、「教育内容は、教師の裁量や教育の専門的な自律性に委ねられるべきである」とし、国も教育内容について一定の基準(学習指導要領など)を設ける権限はあるが、それは「必要かつ合理的」な範囲にとどめられなければならず、特定のイデオロギーを強制するような「不当な支配(介入)」は許されない、としている。
 ところが今回、文部科学省は、同志社国際高校がおこなっている平和教育の内容を調査し、基地建設と、これに反対する人が対峙する現場を見て沖縄が抱える問題を考えることを主目的とするこの研修旅行について、偏っていると認定し、教育基本法第14条2項違反とした。
 辺野古新基地については、普天間基地の返還のために唯一の方策であると国は言明していたが、アメリカは辺野古に基地をつくっても普天間基地は返還しない方針であることが報道されている。国の説明は虚偽であった疑いすらある状況で、地元住民の反対を押し切って基地建設は進められているのであり、基地建設と、それに反対する人が対峙する「現場」を見て(令和8年5月22日付け文科省報告書)、平和であることの意味や沖縄が抱えるさまざまな問題について考える(同校HP)とする同校の平和教育は、「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行」い(教育基本法第1条)、「良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。」(同法第14条1項)とする教育基本法の精神に適うものである。
 それを「偏っている」などとして国が自己に都合の悪い現場を見せることをさせないようにする今般の指導は、まさに国による教育への不当な介入である。

(2)しかも、教育基本法第14条2項は、「特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」としているのであって、同条第1項が定めるように、政治的素養は教育上尊重されねばならず、教育において政治的なテーマを取り上げることは禁止されない。
 沖縄は、日本において唯一の地上戦となった地であり、戦争の悲惨さを現実のものとして伝える地である。加えて、戦後は、多くの米軍基地の負担を担わされて、基地が存在することによる深刻な被害が今でも頻繁に生じている地でもある。そうした地に新たに建設されようとしている米軍基地とこれに反対する人達の対峙を見て、話を聞いて、平和の意味や沖縄の抱える問題を考えることは、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えるのに非常に有益である。同志社国際高校のHPを見ると、高校2年の3学期におこなう沖縄研修旅行は、生徒主体で1か月以上の事前学習を行い、住民の方の証言などから戦争について学ぶとともに、現地の風土や文化を体験して沖縄への理解を深め、研修後の事後学習では冊子『平和を作り出す人』を作成するとしている。ここにはおよそ特定の政党を支持し、又はこれに反対する目的がないことは明らかであり、このような教育は教育基本法第14条2項が禁止する政治的活動にあたらない。
 文科省の指導は、教育現場で行われている真摯な平和教育を、偏っている政治的活動であるかのように言いつのり、その抑制をはかるものであり、まさに行政による教育への不当な介入にほかならない。

3、自由法曹団は、文科省が本件について安全管理面の指導にとどまらず、あえて、平和教育の内容に立ち入って指導をおこなったことは、平和教育全般への政府の介入につながるものであることから、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない教育に対し政府が不当に介入することに断固抗議し、速やかな指導の撤回を求める。

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