2026年5月29日、「国家情報会議設置法の成立に抗議し、その廃止を求める」声明を発表しました

カテゴリ:声明,治安警察,秘密保護

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国家情報会議設置法の成立に抗議し、その廃止を求める

 

2026年5月29日

自 由 法 曹 団
 団 長  黒岩 哲彦

1 今国会に提出されていた国家情報会議設置法案は、5月27日に参議院本会議で自民・維新の与党のほか、国民民主党、公明党、参政党、日本保守党、チームみらいなどの賛成多数により可決され、同法が成立した。施行は同法成立から6か月以内とされており、当年夏頃には設置が見込まれていると報道されている。
 これにより設置される国家情報会議は、各省庁の情報機関からの情報提供を法的に担保し、新設される国家情報局が司令塔となって、情報活動の基盤を強化するため、「重要な国政運営に資する情報」を収集・分析し、外国の利益のために行われる、非公表情報の取得活動や偽情報の流布といった影響工作などへの対処をするとされている。

2(1) だが、司令塔役となる国家情報局は、従前、機密費を用いて政界工作を含む活動をしてきた内閣情報調査室が格上げされたものであり、国家情報会議の議長である高市首相の指示を受ける立場である。高市首相は、自民党総裁選中に対立候補に関する誹謗中傷ととれるような動画を大量に流すよう工作をしていた疑惑が報道されているが、このほかにも自民党の閣僚が選挙中に対立候補であった国会議員を内閣情報調査室ないし警視庁職員に尾行させていたことが尾行されていた当人である塩村あやか参議院議員の国会質問(本年5月27日)により明かされている。
 国家情報会議において収集される情報について抽象的に重要な国政に関する情報とするのみで何の絞りや歯止めもないままでは、政権の都合で際限なく情報収集がなされプライバシーが広く侵害されることが懸念される。

(2) また、国会質問で取り上げられた大垣警察市民監視事件では、警察法の第2条1項で「公共の安全と秩序の維持」を警察の責務としているところから違法な住民監視活動をおこなっていた。違法な監視が判決で断罪された点では自衛隊情報保全隊市民監視事件も同様である。現在最高裁にかかっている「動燃から続く差別是正訴訟」でも、動燃(現在の日本原子力研究開発機構の前身である動力炉・核燃料開発事業団の略)の労務担当者が残していた膨大な資料により、動燃が公安調査庁や茨城県警、勝田署とも連携して職員の動静・傾向を調査し、ランク付けをおこなっていたことが認定されている。このような活動は、警察法第2条の「公共の安全と秩序の維持」という目的からも逸脱した違法なものであることは論を待たない。
 このような違法な活動を情報機関が繰り返してきたことについて、政府答弁では一切反省の弁も述べられなければ、再発防止に努めることも述べられなかった。これでは「またやるのではないか」との懸念はまるで払拭されない。むしろ収集される情報が幅広く、かつ会議に参加する省庁が国家情報局の号令のもといっせいにおこなうのであれば、国民が知らない間に大規模にプライバシー侵害がされる事態が懸念される。

(3) そうであるにもかかわらず、本法では、権力濫用を監視する独立の第三者機関は設けられておらず、国会への定期報告すら予定されていない。これでは違法な情報収集活動を抑制する担保はなく、違法に収集された情報が国家情報会議に提供されることになりかねない。
 このことを意識して、参議院の附帯決議では、個人情報の提供及びその要請について個人情報保護法を遵守し、提供を受けた情報についても、同法の規定に反する利用目的以外の利用を厳に慎むこと(「四」)、政治的中立性を損なう情報収集は行わないこと(「五」)、政府の情報活動の中長期的な推進方策を文書としてまとめ、国会に報告し、その際、プライバシー侵害や政治的中立性を害するような情報の収集及び提供並びにそれらの要請を行わないための具体的方策についても検討の上、盛り込むこと(「六」)、などが要請されているが、これらが守られるかは制度的担保がなく保障の限りではない。

4、そして、政府は今後、本年夏頃から、有識者会議を設け、第2段階である、「スパイ防止」関連法制の検討に入り、27年の通常国会での法案提出を目指すと報じられている。
 この「スパイ防止」関連法制は、自民党と日本維新の会との連立合意によれば、諜報活動やこれを助長する行為を刑罰をもって規制する「スパイ防止基本法」のほか、外国政府の利益をはかると認定した団体に予め登録を求め、その活動を規制していくことを内容とする「外国代理人登録法」及び「ロビー活動公開法」等の複数の法律を束にしたものを言うが、この「諜報活動」をしていないかを探知したり、「外国代理人」とみなした団体やこれと交流のある市民の活動を監視するために広く尾行や通信傍受、盗聴・盗撮がおこなわれることが想定される。そうした活動は、「スパイ」が誰であるか予め特定はできない以上、広く国内外にいる市民に向けられることになる。その過程において上述したように広くプライバシー侵害がおこなわれるおそれが高い。しかも偏見に基づいて集められた情報により「スパイ」や「外国代理人」と認定された場合には刑罰を含む重大な不利益取扱いがなされることが想定される。国家情報会議にどのような情報が集められるのか自体が秘密にされる以上、ターゲットとされた場合には不利益扱いを回避ないし阻止することは困難であり、かつ、不利益取扱いにより被った損害に対する補償もなにも定めがない。つまり、市民の側からすれば「やられ損」になってしまう。しかも、政府により「スパイ」等のレッテルを貼られてしまえば、損なわれた名誉等を回復する手立てはほぼないのであって、冤罪被害者が激増するおそれが高い。

5、そもそも日本は「スパイ天国」と言えるような状況にないことは政府自身が認めているところであり、「厳しい安全保障環境」と言ってみても、防衛上の機密が漏洩することを防ぐ手立ては講じられてきており、2000年のポガチョンコフ事件以来、20年以上にわたり外国への漏洩[健萩1] 事案は報告されていない。
 すなわち、防衛機密の漏洩の防止は漏洩可能性のある自衛官について情報の管理を厳しくすることで対応すべきものであって、それは既に自衛隊法59条によって行われており、広く市民を監視する必要はない。
 諸外国との関係でも、無法な侵攻を繰り返す政府の代表を「世界に平和をもたすことができるのはドナルドだけ」と言っておもねり、特定の仮想敵国をつくり軍拡をはかって緊張を高めるのではなく、国際法に基づいて公平中立な外交をこころがけることにより緊張を緩和し、機密保持や諜報活動の必要性をなくしていくことこそ平和憲法を保持し、世界の公正と信義に信頼して名誉ある地位を占めたいと考える日本国政府のとるべき態度と言える。

6、自由法曹団は、1922年の創立以来、侵略戦争に反対し、自由と民主主義と人権の擁護を掲げて活動していた団体として、この国家情報会議設置法の強行成立に抗議し、深刻な人権侵害が起きる前に本法を廃止することを強く求める。

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