2026年9月8日、「裁量労働制黒書」を発表しました
自由法曹団・労働問題委員会 編
裁量労働制黒書
2026年9月8日
序
現在、高市早苗政権のもと急ピッチで労働基準関係法制の改定作業が進められている。なぜいま労働基準に関する法律の制定なのか。それは2018年安倍政権のもとで行われた「働き方改革」の関連法で定められた附則第12条で5年を目途に労働時間法制をはじめとする労働基準関係法制について検討のうえで所要の措置を講じるものとされているからである。しかし、高市早苗首相はここぞ!とばかりにこれまでに政府・財界が目論んできた「裁量労働制の拡充」の実現を狙っている。2026年特別国会での首相施政方針演説では「働き方改革の総点検においてお聞きした労働者の方々の声を踏まえ、裁量労働制の見直し」について言及し、裁量労働制の対象拡大を中心とした労働時間規制の緩和検討を正式に打ち出しており首相肝いりの政策といえる。
では裁量労働制とは何なのか。読んで字のごとく「裁量」をもって働いている「労働」者に適用される制度であり、実際に働いた労働時間ではなくあらかじめ定められたみなし時間分だけ働いたと見做そう、ということで導入された制度である。1987年の労基法改正によって導入されたこの制度は現在に至るまで数度の改正を経て大きく拡大された。
では本当に裁量労働制が適用されている労働者に「裁量」は存在するのか。また、みなし時間は適切に設定されているのか。あるいは制度の要件を守った運用がなされているのか。そもそも、みなし時間と実際に働いている時間とは均衡がとれているのか。定額働かせ放題の制度になっていないのか。
一日8時間労働制は、近代産業が進展する中で、労働者の命と健康、そして自由を保護するために確立された労働基準法制の根幹をなす最重要のルールである。働かせることのできる時間の制限を取り払う裁量労働制は、この労働のルールを土台から掘り崩し、労働者の命や健康や生活を蝕む深刻な危険を内包するものである。
本黒書では、自由法曹団に所属する各弁護士が実際に取り扱った裁量労働制に関する事例をもとに、裁量労働制がいかに危険な制度であり、労働者にとってまったくメリットのない制度であるかを白日の下に曝す。
また、労働者にとってあるべき労働時間法制とはどういったものなのか。労基法第1条は「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべき」と定めるが、本黒書では裁量労働制に代わる労働者のためのあるべき労働時間に関する政策提言も行う。
※「黒書」とは、中央省庁が毎年作成・公表する公式報告書である「白書」のパロディである。
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