2026年10月19日、「米国による国際刑事裁判所(ICC)への制裁措置等の即時かつ無条件の撤回を求め、日本政府を含むローマ規程締約国に対しICCへの支援並びに「法の支配」に基づく国際法秩序の擁護を求める決議」

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米国による国際刑事裁判所(ICC)への制裁措置等の即時かつ無条件の撤回を求め、日本政府を含むローマ規程締約国に対しICCへの支援並びに「法の支配」に基づく国際法秩序の擁護を求める決議

 

1 米政府は2026年10月9日、大統領令14203号第1条(a)(ii)(A)項に基づき、国際刑事裁判所(International Criminal Court、本部=オランダ・ハーグ)を制裁対象にすると発表した。これにより、ICCが米国内に有する財産は凍結され、米国人による、または米国内で行われる(もしくは米国を経由する)ICCとの取引(ICCの利益のための資金、物品、またはサービスの寄付または提供)ができなくなり、金融機関や企業との取引が制限され、業務に支障を来す恐れが生じている。
 これまでにも米政府は、ICCが、2024年11月21日、ガザ紛争における戦争犯罪及び人道に対する罪の疑いで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相及びヨアヴ・ガラント前国防相に対する逮捕状を発付したことに対し、去る2025年2月6日に、ICCへの制裁を可能とする大統領令14203号が出され、2026年7月13日に、米国政府全体が一体となってICCの活動能力を組織的に無効化し、米軍兵士や政府関係者を標的にしたり、その他の方法で米国の主権を脅かしたりする行為を阻止するキャンペーンを発表し、2026年8月18日には、ICCの赤根智子所長ら2人を新たに制裁対象にするなど、ICCへの攻撃を強めてきた。
 米国による一連の行為、さらに今回のICCそのものを制裁対象とすることは、ローマ規程等による国際法秩序を破壊する暴挙であって、決して許されるものではない。

2 かかる米国の暴挙に対しては、カナダ、デンマーク、ドイツ、フランス、イタリア、日本、オランダ、英国の8か国の外相による共同声明でも、ICCの独立性、公平性、及び完全性に対する継続的かつ揺るぎない支持を改めて表明し、ICCの断固たる支持者として、米国による裁判所への制裁の発表を遺憾に思い、強く反対するとされている。
 私たちは、日本政府に対し、上記外相の共同声明に加え、米国政府の脅しや制裁によるICCの機能を損なう圧力を厳しく批判し、直ちに米国政府に対し、その暴挙を撤回するよう申し入れることを求める。

3 また、日本政府を含むすべてのローマ規程締約国に対し、ICCを通じた「法の支配」に基づく国際法秩序を実現するためローマ規程86条等に定められた広範な協力義務及び国際法の守護者としての役割を果たし、米国の不当な圧力に屈せず、引き続きICCへの明確な支持と協力支援を表明すること及びICCの職員、ICCに協力する者や法人、団体等ICCに関係することによって、米国政府等による不当な圧力によって不利益を受けないようにするための支援を強化することを求める。
 くわえて、米国に対しては、これまでの不当な制裁措置の即時かつ無条件の撤廃、ICCの包括的な無効化を目指すキャンペーンの中止、国際刑事司法機関の独立性を尊重する法的義務の承認をすることを重ねて求める。

4 なお、ICCに対する攻撃は、米国からだけでなく、ロシアからも続いている。
 ロシアは、ICCがウクライナ侵攻に関する戦争犯罪の責任を問い、プーチン大統領らの逮捕状を発付したことに対する報復措置として、ロシア国内の裁判でICCの裁判官ら9名を有罪判決としており、ロシア最高検察庁は2026年10月8日、オランダを含む複数の国に有罪判決が出ている赤根智子所長らの引渡を要求した。これに対して、ICCホスト国であるオランダ政府をはじめとするEU各国は、そもそもロシアによる裁判が「欠席裁判」であり、法に基づく正当な職務を遂行した裁判官や国際司法に対する不当な政治的圧力であるとして、ICCを擁護する立場を鮮明にしているところである。
 こうした大国の思惑によりICCの機能が失われた場合、戦争犯罪を裁いてきた国際法秩序が崩壊するという取り返しのつかない事態に立ち至ることになる。

5 私たち自由法曹団は、ICCの無効化キャンペーンに対して、2026年7月18日常任幹事会において「ICCへの政治的攻撃及び無力化の動きに反対する決議~法の支配と平和のうちに生存できる世界の実現を求めて~」を決議し、ICC関係者個人を制裁対象としたことに対しては、2026年8月21日付で「米国に対しICC幹部への制裁措置を含むICCへの不当な圧力の行使の撤回を求めるとともに日本政府を含むローマ規程締約国に対しICCに対する支援と国際法秩序の維持に努めることを求める声明」を発表してきた。
 いずれも米政府によるICCに対する攻撃の撤回を求め、日本政府及びローマ規程締約国に対し、「法の支配」に基づく国際法秩序を実現するため役割を果たすことを求めたものである。

6 私たち自由法曹団は、人権と民主主義の擁護を目的とし、日本国憲法9条の理念を擁護実現することに意義を認めている。戦争や国際紛争における一定の行動に制約をかけるローマ規程は、憲法9条の精神と軌を一にするものであり、繰り返される米国の暴挙に直面しても、これを座視することはできない。
 私たちは、今、繰り返される米政府による「力による支配」による世界を作りだそうとする暴挙やロシアをはじめとする国々による国際司法への政治的圧力から、法の支配に基づく国際法秩序を守りぬかなければならない。
 私たちは、みたび日本政府、そして締約国各国に対して、ICCの独立性と公平性を維持するためにローマ規程86条による協力義務及び国際法の守護者としての役割を果たすことを求めるとともに日本国憲法9条の理念のもと、市民とともに連帯して、「法の支配」に基づく国際法秩序を実現するためさらに全力を尽くしていくことを宣言する。

 

2026年10月19日

自  由  法  曹  団
2026年東京・浅草総会

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